シュールの効用

シュールの可能性を追求するブログ

2020-01-01から1年間の記事一覧

(46)仏陀の歯を祀る

仏陀(釈迦)の歯は、スリランカ中部州キャンディに位置するマーリガーワ寺院(佛歯寺)に納められている。 仏陀は死後火葬にされ、その遺骨や歯はインド各地に分骨された。 年代記の『チューラワンサ』(37章)によれば、スリランカにはスリー・メーガワン…

(45) ルクソールのオベリスクをコンコルド広場に

3000年前のオベリスクは、もともとはルクソール神殿の前にあった。その一つが ルクソールから輸送され、1833年12月21日にパリに到着した。それから3年後の1836年10月25日、ルイフィリペ王によってコンコルド広場の中心に移動された。 花崗岩のオベリスクは、…

(44)インドで牛が神聖な訳

ヒンズー教徒は、牛の尻尾が死の川を越えて彼らを運ぶことができると信じている。 人が死んだら、多くのヒンドゥー教徒が牛への愛を示すためにできることをする。彼らは農家へ行って若い雄牛を買う。それから聖職者を呼び、死者の名において動物に聖水を振り…

(43) 犯罪小説の始まり

時代の世相や風俗を写しだす犯罪小説。その数は膨大で忘れられている名作も多い。スティーブン・ナイト「犯罪フィクション1800年 - 2000年」(2004)の犯罪小説の年表を参考にすると、1773年に発行された「ニューゲート・カレンダー」が、初めて犯罪事件を網羅…

(42)ニューヨークの4つの橋

1910年発行のニューヨーク案内小冊子「New York - the metropolis of America」にニューヨーク市の4つの橋が紹介されている。以下はその4橋のイラスト。 1、ブルックリン橋=ニューヨーク市のイースト川をまたぎ、マンハッタンとブルックリンを結ぶ橋。18…

(41)エンパイア・ビルのシュール

1931年に完成した当時は世界最も高い建物(381m)であったニューヨークのエンパイアステート・ビルディング。かってここは飛び降り自殺の名所であった。米週刊誌『ライフ』(1947.8.18)によると、1947年の6ヵ月間に、ビルの86階(320m)から4人が投身自殺した…

(40) 富士山のシュール

富士山は日本を象徴する山として世界でも知られている。しかしかっては、その姿は想像の域を出なかった。以下の図はその想像と実像の違いを示したものである。イギリスの旅行家イザベラ・バード(1831-1904)は、ジョン・キャンベルの『私の周遊記』(My Circ…

(39) 最もシュールな列車事故写真

乗客131人を乗せたグランビル・パリ急行の脱線事故は、1895年10月22日午後4時に発生した。列車はモンパルナス駅の終点の車止めを乗り越え、駅のコンコースを通過し駅の壁に衝突した。そして機関車は、車首を下に向けたままレンヌ広場に落下した。この事故で…

( 38 ) パンテオンの洪水

水の都はベニスは水にあふれているが、永遠の都市ローマでは毎年テヴェレの水かさが増え、規模の小さいな洪水は5〜6年に1度、大きな洪水は28年ごとに起きていた。こうした研究結果が、グレゴリー・アルドレーテ著『古代ローマのテヴェレ川の氾濫』Floods of…

(37) ロシア遠征図のシュール

日本人は1853年にペリー提督に会う前から、ナポレオン(1769-1821)のことを知っており、それを絵にしたのがこれである。作者は未詳であるが、ナポレオンを描いた場面は、ロシア遠征の他、ジョゼフィーヌとの結婚の場面、セントヘレナ島に幽閉されている場面、…

(36) オカルティストを超えた存在

伝説的な人物で、最高位のオカルティストと言われるサンジェルマン伯爵(生死不詳)は、定期的にルイ15世(1710 - 1774)とその公妾ポンパドゥール夫人 (1721 - 1764年)の夕食に招待された。ベルサイユであろうとサロンであろうと、彼は聴衆を魅了した。彼…

(35) 最古の職業の一つ

以下の2枚のスケッチは、ジョン・トーマス・スミス著「バガボンディアーナ。またはロンドンの通りを彷徨する物乞いの逸話」(1874年)全30枚のなかから取った。そこには犬をつれた人(7枚)、箒を持った人(6枚)が多かった。 作者が言うように、物乞い…

(34) ヒトラーの2枚の絵

米週刊誌「ライフ」1939年10月30日号にヒトラーの作品である絵が5枚掲載されている。その一枚は軍艦を描いた「戦艦ウィーン」。もう一枚は「ローマの廃墟」を描いたもの。彼の作品には、右下にヒトラーのサインがある。彼は画家を青年時代に画家を志したこ…

(33)ティツィアーノのラオコーン

下の版画はイタリア人画家ティツィアーノ(1488-1576) の絵を、ニッコロ・ボルドリニが木版画に制作した作品。 ティツィアーノはラオコーンの彫刻を、人間ではなくサルを描くことを選択し、ローマの芸術家の学校を嘲笑した。現在、この木版画は版画のコレクシ…

(32) シュールなノミ(蚤)

普段目にすることのないノミも、拡大すると気持ちの悪い怪物に見える。この図はロバート・フック(1635–1703)の著書「ミクログラフィア」(1665)に掲載された顕微鏡がみたノミの図である。同書は細胞の形を顕微鏡が明らかにした最初期の書物で、彼は観察対…

(31) シュールな弁護士

野菜や果物、木の根で構成された肖像画で有名ミラノの作家アルチンボルド(1526 - 1593)は、1562年36歳でウィーンでフェルディナント1世 (1503 - 1564)の宮廷画家となり、67歳でウィーンで死んだ。人気のある春夏秋冬の植物で顔を構成した作品は1573年に描…

(30) シュールなディオニュソス

紀元前335年の演劇の神ディオニュソスを祝う祭典で、コミックや悲劇が上演された。優勝した団体には、ブロンズの三脚が贈られた。賞品としての三脚は、公共の展示記念碑の上に展示された。このときに建てられたこの記念碑は、今日までアテネで保存されている…

(29) 天井画のシュール

ドイツにあるヴュルツブルクのレジデンツ宮殿は、バロック様式の宮殿階段が壮大な応接室として設計されている。建築家バルタサール・ノイマンは、柱のない中空の空間に3段の吹き抜け階段を構築した。そこの天井画を依頼されたヴェネツィアのジョヴァンニ・テ…

(28) ヴェネツィアのシュール

下の2枚の絵は、いずれもヴェネツィアのグランド・カナル(運河)にまつわる絵である。作者はジョセフ・ハインツ3世(1600–1678)とL・カルネバリス(1663 – 1730)である。ハインツの作品は1673年、L・カルネバリスは1690~1700年頃の作品という。いずれも…

(27) シュールの女性画家(2)

ケイ・セージ(1898~1963)は、ニューヨーク州ウォーターヴリートに生まれた。1937年に渡仏。翌年1938年にシュールの展覧会でキリコの作品を見て衝撃を受け、自身もシュランデパンダン展(Salon des Surindépendants)に油彩を出展し、アンドレ・ブルトンと画…

(26) シュールの女性画家

レメディオス・バロ(1908-1963) はスペイン生まれのシュールレアリスムの女性画家。美術学校の同級生と結婚しパリに出る。そこで彼女はシュールレアリスム運動に大きく影響された。1940年にパリに進軍したドイツ軍の迫害を避けてメキシコに脱出。逃亡先で生…

(25) 草上の昼食のシュール化

『草上の昼食』は、1863年にエドゥアール・マネ(1832-83)によって描かれた。この絵は1863年のサロン(官展)に出品したが落選。これまで神話のなかの女神が裸で描かれるのは普通であるが、公の場所での女性の裸体を描いた題材がスキャンダルとなった。モネ(1…

(24) 地震による鉄橋の現実

1891(明治24)年10月28日に美濃・尾張地方に濃尾大地震が発生。死者7273人 、家屋倒壊は14万棟という大地震であった。(「ウィキペディア」2020より) この地震の記録が、1891年11月に、神戸の「ヒョーゴ・ニューズ」事務所から発行されている。 タイトルは…

(23)アメリカ・インディアンのシュール

アメリカ・インディアンの住む土地を1830年から7年間に5回旅行し、最終的に50の部族を訪れたジョージ・カトリン(1796-1872)。その2年後にはミズーリ川をユニオン砦まで3000 km 以上遡り、インディアンの集落で数週間を過ごした。この間彼は、インディアン…

(22)富士山のシュール

富士山の絵では、浮世絵の中では北斎(1760-の「富嶽三十六景」がもっとも人気がある。そのなかでも富士山に波がいまにも襲いかかりそうな「神奈川沖浪裏(なみうら)』がもっとも知られている。このシリーズに人気を集めたため、北斎は今度『富嶽百景』に挑…

(21) 花火のシュール

花火は中国の唐朝の第2代皇帝李世民(598-649)の時代からあった伝統的な風習。花火は、中国語で「烟花」「花炮」と呼び、中国では盛大な儀式やパフォーマンスでよく使用されている。近頃は、山火事など環境保護を重視し、花火や爆竹に対する「禁止令」や「…

(20) 植物画のシュール

下の2枚の絵は、ドイツ生まれの植物画家マリア・メーリアン(1647 - 1717)が、植物に昆虫を一緒に描いたものである。 花の絵や花の図鑑は、普通美しい花だけを中央に描いたものだが、彼女の絵には毛虫と蝶が同じ場所に登場しているので、気分が良いもので…

(19)コレラのシュール

1879(明治12)年、日本でもコレラが流行した。そのとき日本にいたキリスト教宣教師は記事を送り、翌年のイギリスが発行する「図解宣教師ニュース」(1880.3.1) に紹介された。 「昨年の夏は、大阪近郊の日本人にとって大変な時期だった。ウォレステイラー牧…

(18) 樹木のシュール

世界に存在する樹木の種類は数えられないが、想像上の樹木も入れるとどうでもよくなる。想像上の木の一つに人面樹(にんめんじゅ)がある。これは江戸時代の画家・鳥山石燕の描いた妖怪画集『今昔百鬼拾遺』(1781年)に掲載された中国人の想像上の木。その…

(17) ノーズアートのシュール

戦時中での、アメリカの軍用機の生産数は驚く程多い。第2次大戦では爆撃機のボーイングB−17は1万2000機も作られ、乗組員は飛行場に並んだ同一機種から自分の乗る機体を見分けるのがむずかしい。普通、尾翼の機体ナンバーで見分けているのだが、誰かが機首に…