シュールの効用

シュールの可能性を追求するブログ

226 稀有書 102 作家の自殺

「本の手帖」1966年5〜6月号表紙 「本の手帖」のテーマは表紙にある通り、「作家の自殺」である。取り上げられた作家は、ネルヴァル( 1808 - 1855)、ガルシン(1855 - 1888)、ヴァン・ゴグ(1853 - 1890)、ソビエト作家、マヤコフスキー(1893 - 1930)、バ…

225 稀有書 101 革命の恐怖

・ヴィクトワール広場にあるルイ14世の彫像を下ろす図 書名「フランス革命における象徴と風刺」アーネスト・ヘンダーソン著(1912)●フランス革命(1789.7.14. – 1795.8.22.) 1789年7月14日は、パリの民衆がバスティーユ牢獄を襲撃・占領した日を、フランス…

224 稀有書 100 シヴァ神の顕現

生きている神であるシヴァは、すべてのカテゴリーを超越している。最も古い神聖なインドの経典である「リグ・ヴェーダ」(1200 B.C.)は、彼を野生の神、ルドラと呼んでいる。 現代のヒンドゥー教では、最も影響力を持つ3柱(ブラフマー=創造、ヴィシュヌ=…

223 稀有書 99 シュールなインド宗教画

インドのヒンドゥー教徒の間で発達したミニアチュールには、クリシュナ伝説やシバ神話などを主題としたものが多い。題材が神話であるので、「童話の挿絵みたい」といえないこともない。 こうした素朴な絵画も多くは海外の美術館に収められ、もはや庶民がイン…

222 稀有書 98 コロンブスとユダヤ人

コロンブスと彼の乗組員( 写真GETTY) 著書『クリストファー・コロンブスと、探検へのスペインとポルトガルのユダヤ人の参加』 M.カイザーリンク(1894) スペイン王国は1492年1月、イスラーム教国ナスル朝の拠点であるグラナダを陥落させ、イスラーム勢力は…

221 稀有書 97 ポンパドゥール夫人の蔵書

ポンパドゥール夫人(ブーシェ画1756 部分) ポンパドゥール夫人(1721 - 1764)は、ルイ15世の公妾。1721年パリ(現在のパリ2区界隈)の銀行家の娘として生まれる。1744年にはその美貌がルイ15世の目に留まる。彼女はポンパドゥール侯爵夫人の称号を与えら…

220 稀有書 96 プチトリアノン

プチトリアノン正面図 プチトリアノンは、ルイ14世(在位: 1643 – 1715)がベルサイユ宮殿の北西に建てた離宮「大トリアノン宮殿」の敷地に、ルイ15世(在位:1715 - 1774)が設置した植物園の中に建てられた。 この建物はルイ15世の愛人マダム・ド・ポンパ…

219 稀有書 95 ビアズレーの「髪盗人」

CANTO 1 CANTO 2 CANTO 3 CANTO 5 ●『髪盗人』(かみぬすびと、The Rape of the Lock) 『髪盗人』は、イギリスの詩人アレキサンダー・ポープ(1688 - 1744)が書いた擬似英雄詩。ポープの友人達にまつわる実話に基づいて執筆された。社交界の花形アラベラの…

218 稀有書 94 ロートレックのポスター

1891年-ロートレックの最初のポスターが登場。 パリの朝の霧の中で目覚めた通りの灰色の壁に、まだ接着剤で輝いているポスターの色がはじけた。 好奇心旺盛な通行人は、その数が絶えず増え続けており、集まって、見て、驚いている。人は街中で、ロートレック…

217 稀有書 93 ローマのオベリスク

現在、世界にはエジプトから運ばれたオベリスクは30柱あり、その内の13柱がローマにある。 ●サン・ピエトロ広場 サン・ピエトロ大聖堂の正面にある楕円形の広場。ベルニーニの設計により、1656-67年に建設された。4列のドーリア式円柱による列柱廊と140体の…

216 稀有書 92 弥勒(マイトレーヤ)の経典

弥勒菩薩像(ガンダーラ3世紀 Metropolitan Museum of Art) 「弥勒(みろく)菩薩は一般に兜率天(とそつてん)に住する当来仏と信じられているが、彼が作者とされる経典に「瑜伽師地論(ゆがしじろん)」がある。この経典は、玄奘が最も読みたい経典とい…

215 稀有書 91 飛行船ヒンデンブルク号見学

飛行船LZ129(写真deviantart.com) 日本人新聞記者の大塚虎雄が、第2次大戦前夜のドイツを訪れ、その時の取材を『ナチ独逸を往く』(1936)に記録している。記事には、大空の豪華飛行船LZ129の設計者フーゴー・エッケナー博士(1868 – 1954)に面会して、イ…

214 稀有書 90 地獄の鬼

閻魔王の裁き「中国十八層地獄詳細図解」より 『源氏物語』を最初に現代日本語に翻訳した吉澤義則著『国語説鈴』に、「地獄の鬼」の話がある。ここで彼が触れているのは、日本の説話の中で登場する鬼は多くが、死んで浮かばれない霊が悪さをするものが多いと…

213 稀有書 89 白バイの始まり

インディアン・モトサイクル(1920年写真www.wikiwand.com) 「警視庁史」(大正篇・警視庁史編さん委員会1960)という書物には、大正時代の警視庁が扱った事件や法律が収録されており、当時の世相を知るのには大変に貴重な資料となっている。このなかには、交…

212 稀有書 88 ヴェスヴィオ山の噴火

ヴェスヴィオ噴火(1967 下記文献より) 「ヴェスヴィオ山、エトナ山、その他の火山の観測」という書物がある。これは、W・ハミルトン卿から王立学会に追加された一連の報告の手紙をまとめたものである。 イタリア・カンパニア州にあるヴェスヴィオ山で発生し…

211 稀有書 87 ポンペイの剣闘士

剣闘士と司式者 イタリア・ナポリ近郊にあった古代都市ポンペイ。西暦79年、ヴェスヴィオ火山噴火によって地中に埋もれた。爆発時の町の人口は1万人弱で、ローマ市民の別荘も多くあり、また彼ら向けの施設も多くあった。発掘された遺跡から、円形闘技場や剣…

210 稀有書 86 ボッティチェッリの「神曲」のイラスト

「地獄篇」10章の挿絵 「地獄篇」18章の挿絵 ダンテ(1265-1321)の「神曲」の原稿は、1485年から1495年にかけてボッティチェッリ(1445-1510)が描いた92枚の絵で装飾された。テキスト部分と、シーンを描いたイラストとの緊密なつながりが特徴。 ボッティ…

209 稀有書 85 ロンドンタワーのデザイン募集

1位に入賞のロンドンタワー 2位に入賞のロンドンタワー パリで最も興味深いエッフェル塔は、著名なフランス人のギュスターヴ・エッフェルによって設計され、1889年のフランス博覧会で最も注目すべき特徴を顕示した。この塔の建設には、特別に設計された1万…

208 稀有書 84 ナチスを支えた女性たち

マーチン・ファン・クレフェルト著「特権の性」表紙 兵站学の名著『補給戦』の作者マーチン・​ファン・クレフェルト(1946~)には、反フェミニスト論である「特権の性」The Privileged Sex(2013)がある。本書は、女性が受けている社会的な抑圧というものは、…

207 稀有書 83クレオパトラ七世

フランス版『クレオパトラ』(1964) 表紙 『クレオパトラ』(1964)の作者のブノワ=メシャン(1901-1983)は、1947年に戦犯として死刑を宣告されたが、赦免され、歴史研究に専念する。作品に『アラビアのロレンス』、『オリエントの嵐』など多数。訳はナポレオン…

206 稀有書 82 ローマ人盛衰盛衰原因論

モンテスキュー(1689 - 1755) フランスの哲学者モンテスキューは、『法の精神』(1748)で、その博学とその分類能力の技倆を示した。彼が1734年に書いた『ローマ人盛衰原因論』は、読みやすいうえ、その表現の簡潔さにも注目すべきものがある。以下はその…

205 稀有書 81 騒音のなかの集中

碁盤に向き合うジョッシュ・ウェイツキン 何らかの事物に集中して取り組んでいる最中に、突然何かが起こったとする。その瞬間にどういうリアクションをするかは、心理状態によって違ってくる。たとえば、気を散らされまいと神経質になっていたとしたら、その…

204 稀有書 80 社会万般番付大集

『社会万般番付大集』大日本雄弁会(1927) 『社会万般番付大集』のはしがきに次の言葉があります。「自分は番付の作成を畢生の事業となし、既往十余年間に作りしものの実に千をもって数ふると云うも過言ではない。本番付集に収めたものはその中より抜粋した…

203 稀有書 79  ベルゼバブの孫への話

グルジェフの肖像 神秘学指導者グルジェフ(1866 - 1949)のことは、彼の著書が何冊も翻訳されているので知っている人は多い。ただし彼の教えは難解であるため、それを理解、あるいは実践することは、彼の直弟子でもむずかしいと言われている。 彼の著書の…

202 稀有書 78 ヨーロッパ十字軍

ヨーロッパ十字軍(表紙) 34代大統領アイゼンハワー(1890 - 1969)は、第2次大戦で連合国軍最高司令官として「ノルマンディー上陸作戦」の計画の実行を、1944年6月6日とする決断を行ったのは有名である。1945年4月12日、彼はパットン将軍と一日を過ごし…

201 稀有書 77 雄鶏が塔の上にある訳

「家畜系統史」の作者コンラット・ケラー 「家畜系統史」の作者コンラット・ケラー(1848-1930)はスイスの動物学者。彼は1874年にイエナのエルンスト・ヘッケルの下でタコの博士号を取得した。後の研究のために、1882年にエジプトとヌビア、1886年にマダガ…

200 稀有書 76 サドとマルクス

「世界人物逸話大事典」角川書店(1996) という本がある。タイトルの通り、世界の著名人物の逸話による事典である。サドとマルクスという縁のない二人が、この本では見開き頁の左と右にあったので、読んでみた。以下は、引用の引用である。 サド『閨房哲学』…

199 稀有書 75 仇討禁止令

梅原北明編「近世社会大驚異全史」白鳳社(1931) 復刻版 本書は明治元年から明治38年までの歴史を、当時の新聞記事から抜粋して編集したもの。2034頁 ちなみに明治元年の最初の記事は、「幕府瓦解当時における江戸京都の両都市中の落書に現れた珍現象」(月…

198 稀有書 74 平賀源内の「そしり草」

源内画像(桂川甫周画) 平賀源内(1728- 1780)は、江戸時代中頃の蘭学者、戯作者、発明家で知られる。1752年頃に1年間長崎へ遊学し、本草学とオランダ語、医学、油絵などを学ぶ。留学の後に藩の役目を辞し、家督を放棄する。1756年に江戸に出て本草学者に…

197 稀有書 73 切り裂きジャック事件

「英国の罪と罰」(2016) の表紙 アレック・フィッシャー他「英国の罪と罰」は、西暦1000年から現代迄のイギリスの刑法史の教科書である。この書物は一般のノンフィクションというよりは、受験参考書のようにいろんな設問が用意されており、個別にイラストや…