シュールの効用

シュールの可能性を追求するブログ

203 稀有書 79  ベルゼバブの孫への話

f:id:danbuer:20210701084706j:plain

グルジェフの肖像

   神秘学指導者グルジェフ(1866 - 1949)のことは、彼の著書が何冊も翻訳されているので知っている人は多い。ただし彼の教えは難解であるため、それを理解、あるいは実践することは、彼の直弟子でもむずかしいと言われている。
 彼の著書のうちでも、最大の難解な書が『ベルゼバブの孫への話』(1950)である。宇宙人?のベルゼバブが、孫に自分が見て来た地球の進化を語る形式をとっている。作者は読者の意識改革のために、わざとむづかしく書いている。日本語訳でも787頁あり、読み通すのは確かに集中力がいる。以下は21章「ベルゼバブ、インドを訪ねる」のなかの聖仏陀の教えである。日本語版は英語版からの翻訳。原本はロシア語とアルメニア語で書かれ、グルジェフの監修で英訳された。

●2つの宗教
 当時、アシュハーク大陸(アジア大陸?)のこの第三グループの人間たちの間に、互いに何の共通点もない全く独立したいわゆる〈宗教教義〉に基づく、いくつかの独特な〈宗教〉が存在していることがだんだんわかってきた。そこでゼルベバブは、これらの宗教教義を研究してみた。その過程で、後には聖仏陀と呼ばれる者の教えに基づくものが最も多くの信奉者をもっていることを発見したので、それ以後彼は、その研究をするようになった。その結論は、宗教をもつという慣習が誕生してこのかた、そこには二種類の基本的な宗教教義が存在してきたし、現に今も存在しているということだ。
●聖仏陀の役割
 宗教のうちの一つは、ハスナムス(客観的良心が欠如している人間)に特有の精神が機能しはじめた者たちによって生み出されたもの。もう一つの宗教教義は、天からの真の使者によって説かれた詳細な教えに基づくものだが、後者は、この惑星の三脳生物の体内に結晶化している器官「クンダバファー」(妄想発生機能)の特性を撲滅するために送られてきた。この目的のために送り込まれた個人を聖仏陀という。彼は天から命ぜられた仕事を、いかにしたらやりとげるかを真剣に考えぬいた末に、彼らの理性を啓発することでこの目的を達成しようと決意した。(158p)
●教えの変貌
 仏陀の働きにより、地球のこの部分に生息する人間たちにとって有害なあの諸結果は、徐々に彼らの体内から消えはじめていた。しかしここでもまた、みな嘆き悲しむようなことが起こった。不幸なことに、この聖仏陀の教えが、時代を経るうちに、少しずつではあるが実に大きく変化してしまったので、もし聖仏陀が現われても、その教えが自分が教えたものだとは想像だにできなかっただろう。(161p)
●聖仏陀の秘儀伝授
 聖仏陀自身が、彼自ら秘儀を伝授した最も近い弟子たちに、遺伝によって彼らが受け継いでいる器官クンダバファーの本性を駆逐する方法について説明していた時、次のように言った。 『お前たちの中にあるグンダバファーの特性を効力のないものにする最良の手段の一つは、〈意図的苦悩である。そしておまえたちの身体 』が体験しうる最大の〈意図的苦悩〉とは、〈自分に向けられた不快な表現行為〉を耐え忍ぶのを強いる時に生じる』。仏陀のこの説教は、その他の明確な指示とともに、その地に住む普通の人間たちの間に広められた。(163p)
出典 グルジェフ著『ベルゼバブの孫への話』平川出版社(1990)