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202 稀有書 78 ヨーロッパ十字軍

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ヨーロッパ十字軍(表紙)

 34代大統領アイゼンハワー(1890 - 1969)は、第2次大戦で連合国軍最高司令官として「ノルマンディー上陸作戦」の計画の実行を、1944年6月6日とする決断を行ったのは有名である。1945年4月12日、彼はパットン将軍と一日を過ごし、2つの出来事に遭遇する。
 彼らはフランス海岸から西北ヨーロッパを横断してエルベ河にまで戦い抜いて来たのである。午前中、彼らはナチの隠匿財産を発見、坑道に2億5000万ドルの金、米金貨も数百万個あったという。またこの日、彼はドイツの強制収容所をみた。以下その抜粋。
●アイゼンハワーが見た強制収容所
「またその日、私はドイツの強制収容所というものをはじめて見た。それはゴータ市の近〈にあった。まったくいいようのないナチの残虐性、なんの仮借もない人間性の冒涜ーこうした事実を目の辺りに見たとき、私の感情がいかに激しく反撥したか、私にはとても説明するととができない位だ。それまでにも私はただ一般的な話として、また人伝てでこうしたことを聞いてはいたが、この時ほど強い衝撃をうけた経験は私にとって初めてであった。
 私は収容所のあらゆる場所を隈なく視て廻った。いつかアメリカでも、「ナチの残虐の話は単なる作り話に過ぎないー」というような考え方が生れてくるような時があるかもしれない。その時、私は実見者の一人としてはっきり証言できるようにしておかねばならないと決意したのである。
 私に同行した者の中にすっかり見て廻ることができなかったものもある。おそらく直視するに耐えなかったのだろうが、私自身はすっかり見た。見たばかりではない、パットン軍の司令部に戻ると、すぐその晩、ワシントンとロンドンに新聞記者と国会の代表者を、すぐドイツに派遣してほしいと申入れたのだった。これによって、この事実がいささかの疑いを残さぬまでに米英国民の前に明らかにされねばならぬと考えたからであった。」(409p)
 出典 アイゼンハワー著『ヨーロッパ十字軍』朝日新聞社1949