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150 稀有書 26 「チェーカーの手中に」

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釈放されフィンランドに着いたゼーデルホルム

書名 ボリス・ゼーデルホルム著 IN THE CLUTCHES OF THE TCHEKA 英訳HOUGHTON MIFFLIN COMPANY出版 (1929) 


 「チェーカー」とは、1917年12月20日にレーニンによって作られた秘密警察で、スターリンの死後の1954年には、KGBの名称で生まれ変わった。著者のボリス・ゼーデルホルムは、1924年チェーカーによって逮捕され、ソロヴェツキー強制収容所に移送された。彼の犯罪は、南アメリカの建材メーカーの代表として商用でロシアに行ったが、ボルシェビキは彼をスパイ容疑で逮捕、勾留される。しかし2年後の1926年12月、無事釈放されるまでの苦難の物語である。

●逮捕前の状況
 「1924年1月末、スパイ行為と「反革命」の容疑で逮捕の大流行が起きた。ネフスキー通りにある私たちの家の通路は、仲介者やコミッションハンターでさえパニックに陥って、まったく無人だった。
 私たちは皆、まるで魔法の杖にかかったように、ロシアの友人や知人を失った。これは以前にも時々起こっていたが、今では何らかの理由で頻繁にチェーカーが活動していた。チェーカー刑務所で銃乱射事件が行われていること、そしてモスクワとペトログラードのすべての刑務所が溢れかえっているといういやな噂がながれた。
 ソビエトの新聞でさえ、6週間のあいだに、革製品シンジケート、ニコラス鉄道、北西鉄道、プチロフ工場、ウラジミールクラブ、協力組合などを記載した。最も控えめな計算によれば、これらの裁判だけで、ソビエトの刑務所は2千人以上の捕虜でふくれあがった。ただしこれらすべての逮捕には、何らかの形で商法違反に関連していた。」(58p)