シュールの効用

シュールの可能性を追求するブログ

2020-06-01から1ヶ月間の記事一覧

(18) 樹木のシュール

世界に存在する樹木の種類は数えられないが、想像上の樹木も入れるとどうでもよくなる。想像上の木の一つに人面樹(にんめんじゅ)がある。これは江戸時代の画家・鳥山石燕の描いた妖怪画集『今昔百鬼拾遺』(1781年)に掲載された中国人の想像上の木。その…

(17) ノーズアートのシュール

戦時中での、アメリカの軍用機の生産数は驚く程多い。第2次大戦では爆撃機のボーイングB−17は1万2000機も作られ、乗組員は飛行場に並んだ同一機種から自分の乗る機体を見分けるのがむずかしい。普通、尾翼の機体ナンバーで見分けているのだが、誰かが機首に…

(16) ガルーダ神のシュール

インドでは宗教神話を扱うマンガが多く出版されている。下の図は、『ガルーダ』(英語版)という題名のマンガから取った。ガルーダは神話上の鳥で、ヒンズー教の三大神(ブラフマー、ヴィシュヌ、シヴァ)の神、ヴィシュヌ神の乗り物と考えられている。太古の…

(15) ヘビのシュール

巨大な蛇アナコンダは、1997年に公開されたパニック映画「アナコンダ」で有名となった。下の挿絵のアナコンダを描いたのは、イギリス人ジョン・テッドマン(1744-1797)で、彼は1773年から5年間、兵士(キャプテン)として南米北東部の国スリナムに住んでいた…

(14) 奴隷制度のシュール

アメリカの奴隷制度は古いが、奴隷反対運動の歴史も古い。その一つである米国反奴隷制協会は、アメリカの奴隷制の実態についての知識を伝える「米国反奴隷制度年次暦」を1836年から毎年発行してきた。この年次暦には、奴隷制反対の文献、芸術、広告を用いて…

(13)秘密結社のシュール性

秘密結社が組織の秘密を重んじる理由は、組織の仕事が阻害されるのを防ぐためで、彼らは目的のために、世間の常識を超えた行為を行う必要があるからである。彼らの秘密性が大衆の興味をますますかきたて、通俗読み物のテーマの一つとなっている。彼らの行為…

(12)火事のシュール

私は、シュール・レアリスムの作品で火事をテーマにした作品を知らない。精々ダリの「燃えるキリン」(1937)くらいだ。ダリのキリンについて、彼は「男性的な、宇宙の終末論的モンスター」と無意味なことを語っている。しかし大衆向け雑誌では、犯罪や火事な…

(11)戦場のシュール

戦場の最前線はたえず砲弾が飛び交うエリアで、異常事態が日常化している。したがって戦場では、まともな絵を描いてもシュールな絵になってしまう。第2次大戦の戦闘で負傷して病院に到着したアメリカ兵100人中97人近くが回復し、その多くは再び軍の重要な役…

(10) 死後のシュール

シュール・レアリスムは、フロイトの「夢理論」が思想的基盤のひとつになっており、そのため多く画家が夢を題材に制作したものが少なくない。たしかに夢は神秘的であり、まだまだ解明されつくされてはいない。しかし夢が解明されたとしても、それが終局では…

(9) シュールの対抗馬

アンドレ・ブルトン(1896-1966)の『シュルレアリスム宣言』(1924 )から、次第に認知され始めたシュルレアリズム運動。当時は彼らと平行して大きな芸術潮流としての「アールデコ(Art Deco)」があった。アールデコは1925年にパリで開催された「世界装飾芸術(…

(8) シュールな肖像

シュール・レアリスムの作品が紹介される際には、サルバドール・ダリ(1904 - 1989)がひときわ注目を浴びるため、他の作家が紹介されても目立たなかった。たとえシュールな作品を描いても、ダリと比較されて損をしている。 ダリの作品は、描かれる事物が写…

(7) 夢のシュール化

ベルギーの幻想作家ポール・デルヴォー(1897-1994)は、真夜中の屋外を裸体で歩く美女の作品で有名である。それはまさに夢の世界であるが、夢にしては細部迄クリアに見えるところがシュールといえる由縁である。ここにあげた2枚の作品は、いずれも裸体の…

(6) 神話のシュール化

イタリア人画家のジョルジョ・デ・キリコ(1888-1978)は、1906年家族(イタリア人)とともにギリシャを離れ、フィレンツェに移住する。彼は4年間のミュンヘンの生活(1906-1910)で、画家ではベックリン、思想家ではニーチェの影響を受ける。 キリコは1912年…

(5)シュールな空

ベルギーのシュルレアリスム画家ルネ・マグリット(1898年〜1967年)にとって「空」は特別の存在でした。彼が絵の背景に描くときの空と、空そのものを描くときも同じような表情です。制作年代が変わってもそれは同じでした。それをマンネリと捉えるか到達点…

(4)静かなるシュール

ドイツ人画家マックス・エルンスト(1891生まれ)の作品は、どれも謎めいていて興味をそそる。彼の作り上げる画面は、すべてがセットのようで小道具が少なく、音も聞こえてこない。「恐ろしい暗殺者 」では、中央の男性が蓄音機を聴いているが、聴いていると…

(3)コミックのシュール化

米画家でホップアートの作家として名をなしたロイ・リキテンシュタイン(1923生まれ)。彼の作品には、アメリカのコミックの場面をそのまま取り上げたものがある。発売されているコミックの内容は、社会の動きや生き様を反映しているが、コミックの一場面を…

(2)シュールと彗星

彗星は昔から災をもたらす星として忌避されてきた。そして彗星が現れると、多くの国の作家が画題として取り上げた。数ある作品の中で、ジョン・マーチンとターナーの作品がおすすめ。ジョン・マーティン(1789英国生まれ)は、聖書を題材にした作品が多く、…

(1)シュールな襖(ふすま)

ダリ、ルネ・マグリットなどが、その才能を捧げたシュールレアリスムの作品は、超現実的であるがゆえに非日常的であり、因果関係を全く無視したその飛躍性の現象が夢の働きに似て面白い。 ただし時代が加速化されてくると、論理的なものが時代遅れとなり、「…