(9) シュールの対抗馬
アンドレ・ブルトン(1896-1966)の『シュルレアリスム宣言』(1924 )から、次第に認知され始めたシュルレアリズム運動。当時は彼らと平行して大きな芸術潮流としての「アールデコ（Art Deco)」があった。アールデコは1925年にパリで開催された「世界装飾芸術（アールデコ）博覧会」からちなんだ名前で、その様式は世紀末から始まった芸術運動「アールヌーヴォー（Art Nouveau)」」の跡を継ぐものであった。
この流派に位置するフランス人ジーン・デュパス(1882-1964)は、商業デザイナーとしてポスターなどを多く手がけて注目を浴びていた。彼の作品は誰からも理解しやすく、大衆の欲望を覚醒させる最新のイメージに満ちていた。それは生活感が微塵も感じられないが、妖しい幾何学的な美からなりたっていた。この頃から創造芸術と商業芸術との境目が薄れて来ていたのかもしれない。
