204 稀有書 80 社会万般番付大集
『社会万般番付大集』のはしがきに次の言葉があります。「自分は番付の作成を畢生の事業となし、既往十余年間に作りしものの実に千をもって数ふると云うも過言ではない。本番付集に収めたものはその中より抜粋した所謂粋中の粋のみである」
相撲の番付表のように、あるジャンルについて東西にわけ、それを更にくらいの高いものから順に並べていくと、いろいろな事柄が簡単に鳥瞰できるようになるという。これを「明治大正著名変死者番付」のような、ジャンルを問わずにまとめた本は余り見た事がない。これを編者近藤蕉雨(1871-1930) が一人でなしとげたのだからすごい。集めたテーマは340項目。以下はその一部の紹介です。
●古今辞世和歌番付(130頁)
□東方前頭
・かかる時さこそ命の惜しからめ
豫(かね)てなき身と思ひ知らずば 太田道灌
・風さそふ花よりも猶我はまた
春の名残をいかにとかせん 浅野長矩
□西方前頭
・借り置きし五つのものを四つ返し
本来空(くう)にいまぞもとづく 一休和尚
・露深き浅茅ヶ原に迷ふ身の
いとど闇路に入(い)るぞ悲しき 袈裟御前
●大地震火災百人一首番付(310頁)
□東方前頭
・バラックの宿を立出で眺むれば
何処(いづこ)も同じ狭き仮小屋
・心あてに探すも知れぬ本所区の
多く死んだる被服廠跡
□西方前頭
・焼出され立ち退く先は遠けれど
未だ汽車も出ず一人歩かむ
・巡り会ひて嬉しや夫(それ)と思う間に
又はぐれたる火事の晩かな