シュールの効用

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200 稀有書 76 サドとマルクス

「世界人物逸話大事典」角川書店(1996) という本がある。タイトルの通り、世界の著名人物の逸話による事典である。サドとマルクスという縁のない二人が、この本では見開き頁の左と右にあったので、読んでみた。以下は、引用の引用である。

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サド『閨房哲学』フランス語版

・マルキ=ド=サド(1740~1814)の遺言
 ◇フランス大革命開後、晩年のサドは異常なまでに肥満していた。あまりに長い牢獄の生活、散歩の禁止、ついには執筆まで禁止されて、しかし食欲だけは老いても衰えなかった彼は、肉体と精神の運動不足で、ただただ肥満する以外なかったのである。(渋澤龍彦『サド侯爵の生涯』)
◇死の近づくのを悟ったサドは遺言状のなかで、自分の遺体の埋葬場所を指定し、葬式はいかなる形式のものにせよこれを行なわず、墓は地表から隠れるようにと希望し、「余は人類の精神から余の記憶が消し去られることを望む」と記した。だがこの遺言は無視され、ンャラントン精神病院付属の墓地に、カトリック教会の方式どおりに埋葬されたうえ、皮肉にも墓の上には十字架が立てられた。(同前)

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「共産党宣言」(1)マンガ版

・勉強家マルクス(1818~1883)
◇ロンドンの大英博物館の図書室がマルクスの書斎であり、彼は「たいてい朝の6時から夜の7時まで」そこで仕事をした。1862年のころのこと、一人の入館者が一冊の本をもって関覧席をさがしていた。あいている席に坐ろうとすると、当番の図書館員がその人にこう話しかけた。「もしもし、この席はあけておいていただけませんか。ここはドクターマルクスさんのお席です。マルクスさんは必ず来るにちがいありません」」。
 するとその人はびっくりした様子で「ドクターマルクスですって。共産党宣言を書いた人で労働運動の指導者のことですか」。「そうだろうと思います。でもそんなことは私になんの関係もございません。私の存じ上げていますことは、工場内労働についてのわが国政府のこの年報がドクターマルクスのためにここにおいてありますので、あのかたはただ今この年報でお仕事中だということだけです」。
 「毎日なのですか。きょうもくることは確かなのですか」。すると館員は笑顔で答えました。「ど安心下さい。ドクターマルクスは何年もまえから、毎日ちょうど10時間ここでお仕事なさってますのですから。あのかたは、私がこの閲覧室でこれまでお見かけしたかたのうちで、いちばん勤勉で几帳面な勉強家でございます。それに私は20年間ここに勤めておりますもんで、皆さんをよく存じあげておりますので」。(ヴァルター=ヴイクトル『カール=マルクス』、土屋保男『革命家マルクス』)