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194 稀有書 70 輪廻とカルマ百科事典

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表紙

 いかにも「トンデモ本」的タイトルだが、中味はすこぶる学術的である。本書は2段組み320頁の大著で、仏教やヒンズー教の輪廻観はもちろん、現代から古代文明の輪廻思想をも知ることが出来る便利な書物である。次は「輪廻と記憶」の問題を扱った項目の一つ。ここで読み取れるのは、決して結論を押し付けてはいない姿勢でしょう。

●年齢要因と再生(Age factor and rebirth)
 少なくともテルトゥリアヌス(160-220の神学者)の時代から、西洋で問われてきた生まれ変わりに関する疑問に、「なぜ大人として死んだ人間は、大人の記憶を持って生まれ変わっていないのか?実際、ほとんどの場合、(前世の)記憶がまったくないのか?」です。
 この問題は、「魂と人格」、または「形而上学的な魂と経験的な魂」の間に区別があるという考えにつながりました。
 理論的には経験的な魂は、体と脳(心)の依存性に従って、加齢に伴う記憶を保持するが、体とともに(記憶も)死にます。
一方、真の魂や形而上学的な魂は、通常の老化プロセスを経験しません。この魂には個人的な記憶がないため、他のすべての魂とほぼ同じです。
 この個性の欠如は、ヒンドゥーのアートマンのそれと非常に似ています。この解決策の主な問題は、自発的にまたは催眠術の年齢回帰を通じて、過去の人生を覚えている人がいるという考えを、完全に否定する必要があるということです。
 年齢要因と再生に関する特に仏教の問題は、仏教では、少なくとも理論的には、その「無我」の教義のために、いかなる形而上学的な魂も受け入れることができないということです。(12p)
 出典 Encyclopedia of reincarnation and karma / Norman C. McClelland. McFarland & Company(2010)