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145 稀有書 21モスカ「支配階級」

 

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モスカ「支配階級」扉(英訳版1939年)

イタリアの政治学者のガエターノ・モスカ(1858-1941)が、38才のときに書いた「支配階級」に、国が滅ぶ2つの原因についてふれている。権力の移譲が比較的おだやかに行われた江戸時代末期の日本を例にしている。  国が滅ぶには2つの原因があるが、滅ぶ場合、この2つが伴っているようである。
 国が滅びる第1の原因
 困難に対処するために、支配階級がそれに対応する秩序を再編成する場合、社会の下部の深い層から新しい血と新しい生命を引き出してくることでができないときである。
 国が滅びる第2の原因
 国は、国民を結びつけ支えててきた道徳的な力が減少する時に滅びる。 なぜなら、個々人の道徳的な力のかなりの分量が集中され、統制されて、集団の利益に関連した目的に振り向けられるよう指導できるからである。  国の魂の核となる伝統を放棄することなく、他民族との接触に適合した注目すべき例は、この5、60年間の日本が示している。
 日本は、ばらばらになることなく急進的に変化する方法を見つけた。 問題の期間に、日本が最も知的な限られた上流階級によって支配されていたことは興味深いことである。 もちろん、徐々にヨーロッパの概念が、日本の住民の下の層に浸透する機会が残されており、これにより日本は、新旧の考え方の不一致による危機に直面することは避けられないだろう。16章「支配階級と個人」 参考文献 ガエターノ・モスカ「支配階級」(1896 英訳1939 日本訳1973)