シュールの効用

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146 稀有書 22  マクルーハン「テレビとは何か」

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マクルーハン『機械の花嫁』英語版2001年表紙

 1967年サイマル出版社からでたマクルーハン著『マクルーハン理論』(Explorations in Communication 1960)のメディア理論は、出版当時大変な話題を集めた思想?であったが、当時はその奇抜なアイディアに振り回され、その本質が理解されたとは言えなかった。あれから60年も経って、あらためて読み直してみるとそのすごさがわかる。
 彼の理論が時代を先取りしていたことと、人間が置かれている地域や環境によって、メディアが与える印象とその影響が(同じコンテンツであっても)異なることに、気づいていなかったせいもあった。では「今、それを読むメリットは何か?」我々はこれまで、文字のなかった聴覚文化から文字文化の時代を経てきたが、今日の多元的メディアの時代には、文字文化に培われた思考体系では、現在何が起きているかを理解できないというところから始めることと思われる。

●すべてが同時に起こる世界
 テレビによると経験の形式はきわめて深い無意識的な内省のごとき性質をもつものであり、黙想的で東洋的なのである。テレビっ子というのは、深奥なところまで東洋化した人間なのである。 彼は目標というものをこの世で追求すべき目的とは考えない。彼は役割は受け入れるが、目標は受け入れないのである。彼は内側に向かっているのである。これほど大きな革命が、これほど短い間に生じたことは、西欧、いや、あらゆる社会において、いまだかつてなかったことである。
 感受性と経験のこの深奥における革命は、なんらの警告なしにやってきた。だいたいこのような革命が起こっていること自体、人は気がつかないでいるのである。この革命はあらゆる種類の不安、動揺、疑問を生み出しているのであるが、なんら理解はされていないのである。
(「テレビとは何か」マーシャル・マクルーハン 70p)