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130 稀有書6  ナチス狂気の内幕

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英訳『第三帝国の内幕』表紙

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英訳『シュパンダウ日記』表紙

 アルベルト・シュペーア(1905 - 1981)は、ヒトラーに信頼された建築家で、ナチスドイツの主任建築家として、ヒトラーやゲーリングなどの住居の設計から党大会会場、競技場施設などの設計を行った。1942年からは軍需大臣を務めた。彼は1946年のニュルンベルク裁判で懲役20年の判決を受けた。1966年10月釈放、4年後の1970年、回顧録『第三帝国の内幕』(日本語版『ナチス狂気の内幕』)を出版した。この本は、彼が収容されていたシュパンダウ刑務所内での原稿をまとめたもの。
 また彼は同時に日記を書いており、これも『シュパンダウ日記』として1975年に出版された。
●彼のヒトラー批判
 ヒトラーが戦争中にしばしば「より大きな失敗をするほうが戦争に負けるんだ」と述べているのが、今日興味深く思える。ヒトラー自身のあらゆる領域での決断の誤りは、生産能力の喪失によってどっちみち敗北する戦争の結果を早めることに貢献しただけだった。たとえば、イギリスに対する彼の錯乱した空中戦計画、戦争開始時の潜水艦の不足、特に全体的戦争計画を立てることに対する彼の怠慢等である。実際、ヒトラーの決定的な過ちを指摘しているドイツの各種の記録文書の記述はほぼ正しい。しかし、それもこの戦争に勝つことができたかもしれない、という意味ではないのだ。(『ナチス狂気の内幕』16章 品田豊治訳 読売新聞社1970年)