シュールの効用

シュールの可能性を追求するブログ

129 稀有書5 ゲーレン回顧録

f:id:danbuer:20210330160438j:plain

ラインハルト・ゲーレン回顧録(1972年英訳版)

●ゲーレンのヒトラー批判
 西ドイツの情報機関である連邦情報局(BND)の初代長官ラインハルト・ゲーレン(1902 - 1979)の回顧録。
 彼は第二次世界大戦中の1942年、東方外国軍課に異動。ゲーレンは対ソ諜報網を立ち上げ、ドイツの諜報活動の中心人物の一人となった。
1945年春、ドイツ国境に迫るソ連軍の戦力の優勢の報告がヒトラーを怒らせ、解任される。
 彼はドイツが降伏した2週間後に、ソ連軍事情報をもってアメリカ軍に投降し、ソ連の共産思想の脅威を訴えた。アメリカはソ連を連合国として評価しており、ソ連の情報の価値を評価しなかったが、米軍情報機関がその価値を認識して彼を中心とする、対ソ諜報組織「ゲーレン機関」を設立した。このあたりのいきさつも「回顧録」に詳しい。
 本書の中でゲーレンは、両軍の軍事情報を分析して、ヒトラーの非現実的な戦略を徹底的に批判し、ドイツ参謀本部の作戦通りに進めたらソ連攻略に成功していたと言っている。また連合軍も戦争勃発時に、政治的・軍事的行動をしていたら短期間のうちにドイツは敗北していたとも述べている。(資料「諜報・工作 ラインハルト・ゲーレン回顧録」赤羽達夫監訳 読売新聞社1973年発行)