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157 稀有書 33 「処刑と拷問の事典」

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英語版の表紙

 ジェフリー・アボット「処刑と拷問の事典」原書房という書物がある。原著は項目をアルファベット順に並べているが、翻訳では日本訳の項目を五十音順にならべている。この本は珍しい本から歴史的事例を取り出して解説しているので、文献資料も参考になる。
 下に取り上げた項目は、「動物の腹に縫い付ける」という処刑法である。出典であるルキアヌスの「死者の対話」(LUCIAN Volume VII, HARVARD UNIVERSITY PRESS)をとり出して確認してみたが、その「話」がどこにあるのかが見つからなかった。(なお以下の文章は自分で訳したものだが、もちろん翻訳者の訳の方がこなれている)

●「動物の腹に縫い付ける」
 ギリシャの作家ルキアヌス(117 – 180年)の時代には、多くの奇妙で反抗的な方法が実施されており、その1つが彼の「死者の対話」に含まれている。 これは、キリスト教の殉教者である女性に課せられる罰則を決定するために行われた訴訟の報告で、ある役人は次のように述べている。
 「我々は、この娘が長く続く痛ましい苦痛に耐えることになる、ある種の刑罰を発見しなければならない。だから私たちはこのロバを殺し、そのあとその腹を切り開いて、内臓を取り除いた後、(彼女が窒息するのを防ぐために)彼女の頭だけが外に出るように、娘を死骸の内側に閉じこめる。次にこれが縫い終わったら、両者をハゲタカの集まる場所にさらすのである。これは新しく、奇妙な方法で準備された餌という訳だ。
 さて、この拷問の性質を考えてみていただきたい。そもそも、生きている女性は死んだロバに閉じ込められる。それから太陽の熱のために彼女は、その腹の中で焼かれる。さらに、彼女は致命的な飢餓に苦しめられるが、それでも自分から命を絶つことはできない。彼女の苦しみのさらなる特徴は、ロバが腐敗するときの死体の悪臭と、むらがるウジ虫の群れの両方から苦しめられる。最後に、死骸を食べているハゲタカは、生きたまま女性をばらばらに引き裂きくだろう。」
 全員がこの巨大な提案に同意し、全会一致でそれが実行されることを承認した。
 資料ジェフリー・アボット「処刑と拷問の事典」原書房2002) 原題 The Book of Execution