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190 稀有書 66 聖武天皇の前世

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東大寺の大仏(写真Baidu百科)

 東大寺は、奈良時代(8世紀)に聖武天皇(701 - 756)が建立した寺である。大仏開眼会(かいげんえ)は752年で、竣工したのは758年であった。
 「奈良の大仏」として知られる盧舎那仏(るしゃなぶつ)を本尊とし、開山は良弁( 689- 774 )である。鎌倉時代に記された仏教史『元亨釈書(げんこうしゃくしょ)』には、東大寺について次のように記している。
●聖武天皇の前世
 東大寺は天平15年(743)10月15日、帝、近州信楽京に於て長さ16丈(48m)の盧舎那仏を創む。帝「発願の疏」を製して、広く天下に告げた。初め沙門良弁という人あり、帝の為に重んじられる。帝に像殿を作るのを勧めた。ある晩帝は夢で、良弁の前世は支那の僧侶であった。彼は法を求めてインドに行くが、流沙に到って大河に道を遮られる。良弁、銭が無くて渡ることができず、数月留まることになる。帝、その前世は渡し子であった。良弁の求法を憐んで、渡し賃を問わずに彼を渡す。良弁のこのとき、誓いを発して「願わくは、あなたは来世には必ず王位に登るでしょう」と言った。これによって日本での主たりと。
 覚めて後、帝、この像を創む。天平16(744)年11月に甲賀寺(甲賀郡)に於て像の型を造る。帝、親からその縄を引き、大常(祭礼を司る)に勅して楽を演奏させる。17年8月に和州添上(そえかみ)郡に移して改めて造る。
 …天平勝宝元年(749)10月24日に大仏完成。年を経ること3年、改鋳すること8回である。殿の高さ15丈6尺、東西29丈、南北17丈なり。東西の両塔の各々の高さは23丈である。12月丁亥(ひのとい)、帝及び聖武上皇は寺に詣でて仏を礼した。(『元亨釈書』志一寺像志、12東大寺。 文は現代風に修正。記載年代は原文のまま)
 出典「国訳一切経和漢戦術部史伝部20」大東出版社1967