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166 稀有書  42 「本草綱目」の尿療法

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「本草綱目」中国版

 「本草綱目」は、明朝の李時珍(1518- 1593)が編集したもので、1578年に完成。日本でも初版が輸入され、「本草学」のルーツとして多大な影響を及ぼした。この本は、昭和4(1929)年に春陽堂から全15巻本で翻訳されている。それぞれ500頁から700頁はあるので、平均600頁としても合計9000頁になる大著である。
 このなかの12巻には「人部」52巻が載せられ、項目として、乱髪、頭垢、耳塞、爪甲、牙歯、人尿なども含まれている。これらのものも医薬品として用いられたのだろうか?
ためしに人尿(487p)を見てみると、次のように記載されている。
●人尿 
 釋名=小便(素問)、輪廻酒(綱目)、還元湯。「時珍曰く、尿は尸(し)に従い、水に従うの会意である。方家ではこれを輪廻酒、還元湯というのは隠語であって、飲めば胃に入り、精気を遊益して脾に送り、脾気は精を散じて上に肺に帰し」…と続く。
気味=「からいが、寒にして毒なし」。
発明=「弘景曰く、初めに頭痛を起こしたときには、ただちに人尿数升を飲めば、やはり多くは癒える。葱と合わせて湯にして服するのがいよいよ良し」とある。
・「震亭曰く、小便は火を降すことが甚だ速い。かって見た一老婦人は、年80を超えて容貌40くらいに見えるので、その訳をたずねてみると、常に悪病があって、人の教えで人尿を服し、40余年に及んだということであった。かつ老健にして多病がなかった」。
 ただしこの書によると、飲み方にもいろいろな方法があるようである。日本にも「尿療法」があるが、そのルーツの一つが「本草綱目」といえる。

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李時珍(1518- 1593)