シュールの効用

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160 稀有書  36 オーバーキル

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「オーバーキル」 ラドリー・バルコ著 CATO INSTITUTE 2006

●本書の出版の趣旨
 アメリカ人は長い間、違法な侵入者から自宅を守る権利があると主張してきた。残念ながら、その権利は消滅する可能性がある。過去25年間、アメリカは民間の法執行機関の不穏な軍事化を見てきた。日常の警察活動の特殊任務のための特殊兵器攻撃チーム(SWATと呼ばれる)の劇的な増加である。
 今日のSWATチームの最も一般的な用途は、麻薬令状を提示することで、予告なしに強制的に家に侵入できる。これらの頻繁な襲撃は、推定では年間4万件で、非暴力の麻薬犯罪者、傍観者、および誤って標的にされた民間人が、眠っている間でも、警察官ではなく兵士に扮した重武装の準軍組織のチームに自宅が侵略されることの恐怖よって不安にさらしている。警察が誤って間違った住居を狙った場合、襲撃は無実の人々を恐怖に陥れ、麻薬犯罪者だけでなく、警察官、子供、傍観者、無実の容疑者にも数十人の不必要な死傷者をもたらした。本書はその実態を提供するものである。

●SWATの誕生
 ロサンゼルスの長年の警察署長であるダリル・ゲイツは、1966年初頭にSWATチームを発明したことで広く知られている。そのアイデアはロサンゼルス市警のジョン・ネルソンがゲイツにもたらしたという。現代のSWATチームの発想は、メキシコ系アメリカ人の公民権運動家セサール・チャベス(1927-93) が率いる農場労働者の蜂起に対抗するために群衆管理官、暴動警察、狙撃兵で構成された州の専門部隊が集まった。この暴動(1965年8月)は、ワッツ市(カリフォルニア州、現在はロサンゼルス市)で発生した黒人による事件で、6日間で死者34人、負傷者1,032人を出し、逮捕者は約4,000名にも及んだ。そのため、ゲリラ戦術に対抗する対抗策を求め、特に危険な状況に圧倒的な力で対応できる、軍事訓練を受けたエリートの法執行官の育成が要求された。

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ワッツ暴動で燃える町並み

 ゲイツは元海兵隊のチームを呼び寄せ、新しい組織のために厳選した警察官の小グループを訓練した。そして彼はこの部隊を「特殊兵器攻撃チーム」(SWAT)と呼んだ。
 SWATはすぐに公務員、政治家、一般の人々から支持を得た。1966年8月、元海兵隊員チャールズ・ホイットマンが、テキサス大学の時計塔の頂上から下のキャンパスに発砲。46人が標的となり、15人を殺害した。ホイットマンによる無差別殺人に対する大衆の恐怖は、都市警察を補完するためにエリート部隊を訓練するゲイツの考えを支持するようになった。その後、SWATチームは全国の大都市にも導入されていった。(本文概要より)