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192 稀有書 68  死へのフライト

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ブランシャール夫人の死(1819)

 リーダースダイジェスト社から出版された『嘘か真実か』(1988 原題Facts & Fallacies)は、5部からなる科学や生物のめずらしいエピソードを集めたもの。その3部に「幸運と不運」という章があり、「運命による死」という副題がついている。以下の話はそのなかの一編で、夫婦の気球操縦士の命を賭けた生涯である。

●死へのフライト
 フランスの気球競技のパイオニアであるジャン・ピエール・フランソワ・ブランシャール(1753-1809 )は、1784年3月2日、シャンドマルスから飛行した水素ガス気球で、パリで最初の気球飛行を行った。翌1785年、イギリス海峡を空路で横断した最初の人物でもある。
 彼と同様に勇敢な妻のソフィー・ブランシャール(1778-1819 )も、有名な気球乗りで、全国的なイベント、特にナポレオンとの結婚や子どもの誕生を祝うセレモニーとして何度も気球に乗った。
 上の19世紀のエッチングは、ブランシャール女史が、1819年、パリのティヴォリ公園での公開飛行中に、気球から打ちあげた花火が気嚢の水素ガスに引火。気球は炎を包まれたまま建物の屋根に墜落し、彼女は死亡した。航空事故で死んだ最初の女性となった。彼女の夫も1808年に、気球の飛行中に卒中を起こし、その翌年に死亡した。
(資料 Facts & Fallacies, Edited and designed by Dorling Kindersley Ltd.The Reader’s Digest 1988.)