147 稀有書 23珍説愚説辞典
「珍説愚説辞典」は、訳者後記を含め翻訳で769ページある大著である。1頁5人の著書からの引用とすると、およそ3,700册からの抜粋集となる。原著はフランス語であるので、読者の活用を考え50音に並べてある。従って読者の興味を引く単語からランダムに読めば良い。
「誰でも書けるわけではない珍説愚説に満ちた本を書くことが大切なのではない。重要なのは必要な寛大さを身につけることだ。それがなければ人間再生の春は来ない。珍説愚説の権利を守ること、そして自由を知ることだ。1965年6月」と作者の序文にある。
以下は5つほど、この本が選んだ中味を紹介したい。
『アインシュタイン』/意外な功労
・アインシュタイン夫人は現在最もインタビューを受けることの多い女性である。彼女がそうした苦難に耐えているのは、ひとえに、名高い四次元の発明者である夫の仕事がこれ以上増えないようにという思 いからであることは疑うべくもない。 「パリ・ミデイ」1933年9月8日
『軍隊(英国の)』/ひどい話
・ネルソン提督の水兵はほとんど全員が徒刑囚であり、ワーテルローでナポレオンを破ったウェリントン配下の英雄はどうしょうもないならず者であった。
エクトール・フランス『ロンドンの夜』(1900)
『戦争』/戦争は人間を向上させる
・経験があるからこそ言えることであり、余計な心配など必要ないことなのだが、戦争に従事するからと言って、兵士が堕落したり残忍で非情な人聞になるなどということはありえない。それどころか戦争は人間を向上させるのだ。そのことを ぜひ理解してほしいと思う。
ジョゼフ・ド・メーストル『ペテルプルク夜話』(1821)
『洗礼』/しなくてもかまわない
・子どものとき洗礼を受けなくても、殉教すれば受洗したのと同じことになる。
ミーニュ師『新神学百科事典』(1851)第十巻「洗礼」の項
『創造』/みんなが知っている日付
・天と地を御言葉によって造られた神は、自らの御姿に似せて人を造られた。紀元前4004年のことである。
ボシュエ『世界史論』(1681)