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138稀有書14  米占領下の日本の愛

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マーク・マクレランド「米占領下の日本の愛、性、民主主義」2012年表紙

 太平洋戦争終結時の日本の壊滅的な敗北と、1945年から1952年までの主に米軍による占領は、日本政府と同様に、個人の生活に大きな変化をもたらした。戦前の価値観からの急激な変化は、愛や性の領域迄も及んだ。これを双方の国がどう対処したか。以下はその一つの対応策であった。
●友愛の政治
 何世紀にもわたる封建的抑圧から日本女性を解放するというSCAP(連合軍総司令部)の高い理想にもかかわらず、一連の制約を解除することは、他の制約を課すことにつながった。日米関係は、特に日本人女性とアメリカ人男性が懸念している場合、「友愛」の悪影響に関する不安に満ちていた。これらの不安は双方で強かった。日本の降伏から最初の米兵が到着するまでの数週間、日本の当局者は、若い女性を田舎の親戚に送るか、あるいは若い娘や妻が都市から離れられない場合には、屋内にいるよう国民に警告した。
 日本軍がかつての植民地の女性に対して行った残虐行為や、軍が承認した「慰安所」のシステムが日本のメディアで報道されていなかったが、日本の敗北の時点で日本が支配する領土全体の慰安婦は約8万4000人いたと推定された。(…)
 しかし、当局が想定した集団レイプと略奪行為は、新たに到着した米軍によるレイプと誘拐の散発的な報告があったものの、最終的なものではなかった。(…)連合軍の隊員に関する否定的な報告を禁止する、新しい検閲体制が実施される前の9月10日、「毎日新聞」は、進駐の最初の週に9件のレイプが行われたとの報告を伝えた。
 これらの個々の事例は衝撃的だが、日本の占領中に南京などの中国の都市で起きたような大規模な性的虐待は指摘されず、外国軍の到着に関するパニックはすぐにおさまった。
 日本の当局者は、女性を2つの対立する「プロ」キャンプと「貞淑」キャンプにグループ化することを示し、「女性の防波堤」として機能する可能性のあるセックスワーカーの組織を募集して、「良家の娘」を外国人占領者の貪欲な性的欲求から保護した。
「レストラン」、「ダンスホール」、「ビアホール」として指定された一連の施設で構成されるレクリエーション・アミューズメント協会(RAA)には、登録されたセックスワーカーと、他に生きるための選択肢がない貧しい若い女性が採用された。(…)日本では、認可された売春は合法であり、当局は日本軍に「快適な」施設を提供する豊富な経験を持っていた。このようにしてRAAは「並外れたスピードで設置され、不足している建物や施設を確保する優れた能力を示した」(要旨「米占領下の日本の愛、性、民主主義」パルグレイブ・マクミラン発行 55p Love, Sex, and Democracy in Japan during the American Occupation by Mark McLelland)