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137稀有書13 アメリカの朝鮮占領

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「世界史のなかの日本占領」日本評論社 1985年発行の表紙

 連合国による日本の占領とはなんだったのか。それは日本に何をもたらしたのか。その過程と結末は戦後の世界史にとって、どんなな味を持ったのか。1983年11月29日から3日間にわたって東京都麹町の番町共済会館で行なわれた、法政大学第8回国際シンポジウム「世界史における日本占領」は、そのような問題視角から日本占領に迫った、最初の試みであり、この本に収められているのはその記録である。(「はじめに」より)
 シンポジュウムに参加された方々は39名で、うち外国の学者は16名という陣営で、知ることが少ないテーマについて貴重な意見がまとめられている。(本書は古書で入手可能)以下はそのなかで、ラファイエット大学助教授のジョン・メルリ氏の報告「アメリカの朝鮮占領」のイントロ部分を記す。

●アメリカの朝鮮占領 (報告者ジョン・メルリ)
 日本に着いてまだ2日目ですので少々時差に悩まされていますが、出席できたことをうれしく思います。しかしアメリカの朝鮮占領について話すことは、特にうれしいこととはいえません。どのような基準に照らしても、アメリカの朝鮮占領は失敗だったと断定せざるを得ないからです。それは数十年に及んだ過酷な日本の植民地支配から解放されて間もない朝鮮を、悲劇的な分断状態にみちびき、人民委員会の組織にみられた自主的に湧き起こる大衆参加の意志を圧殺し、かつては明らかに対日協力派であり、また強力な官僚支配と警察権力をふるう、南朝鮮の右派勢力を政権の座につけたのでした。もっとも重要なのは、アメリカの朝鮮占領が5年後には300万人から400万人、ある推定によれば全人口の6分の1を犠牲にした、朝鮮戦争をひき起こす諸条件をつくりだしたということです。
 しかしそうはいっても、アメリカの国家政策の観点からすれば、それほどはっきり失敗と断定はできない、ということをつけ加えるべきでしょう。というのは、この占領は単に一連の失敗、誤解、下手な構想に基づいた初期政策の連続だっただけでなく、朝鮮半島を全部ソ連の手に渡すことはしないという、戦略的な目標達成のための先制的な占拠行動として、結果のよしあしはともあれ、成功したものだったからです。(78p)