シュールの効用

シュールの可能性を追求するブログ

132 稀有書8 満州国壊滅秘記

f:id:danbuer:20210402090316j:plain

「満州国壊滅秘記」の扉

 作者は、当時満洲国司法部参事官の職にあったが、同時に関東軍嘱託として、関東軍司令官や、総軍参謀長が、満洲国皇帝と会見する際の通訳を担当していた。本書はソ連が参戦した昭和20年8月9日から、溥儀の逮捕、そして旧満州国首脳の一斉逮捕、そして作者の逮捕迄が記されている。

●溥儀皇帝への避難勧告
 軍司令官は、「陛下には、この際早急に後方の安全地帯にお移り願いたいと存じます。」との申し入れを行なった。皇帝の不安にも、その都度「大丈夫でございます。軍はいつでもそれに対処できるよう、常に万全の策を講じております。どうかお心安く思召すように」といいきってきた。そして、関東軍ひとたび蹶起すれば、ソ連軍いかに強大であろうとも、たちどころにこれを粉砕し尽すであろうと豪語してきたのである。だから、たとえソ連が参戦するとしても、関東軍が、無惨に敗れるなどとは、夢にも思っていられなかったにちがいない。(18p)

●作者あとがき
 「世上英雄視されるものにははったり屋が多い。私はそれを、ソ連参戦の前後を通じていやというほど見せつけられた。在留民保護という大任を忘れて、まっさきに逃げだした関東軍。在留民をほったらかして、自分達の家族だけをまっさきに疎開させたその醜状は、歴史の存する限り、永久に汚点として残ることは必定であろう。」(嘉村満雄「満州国壊滅秘記」大学書房1960 )