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125 稀有書1 『1919年のロシアでの6週間』

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アーサー・ランサム著『1919年のロシアでの6週間』の表題頁

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ヒュー・ブロガン著『アーサー・ランサムの人生』の表紙

    イギリスの児童文学作家アーサー・ランサム(1884 - 1967)は、『ツバメ号とアマゾン号』シリーズの作者として名高いが、彼は第一次世界大戦の開始後、1914年に、「デイリーニュース」外国特派員として東部戦線での戦争を取材した。彼はまた、記者として1917年のロシア革命を取り上げ、レーニン、トロツキー、カールラデックを含む多くの指導者と個人的に親しくなった。もちろん彼を、スパイではないかと疑う人間もいた。
 彼の書いた『1919年のロシアでの6週間』(1919.6) には、1919年3月3日の第3インターナショナルの開会式に出席したランサムの記事がある(140p)。会場はクレムリンのなかの一室。エカチェリーナ2世の時代に建てられた古い法廷では、赤軍の2人の兵士がドアに立っている。部屋全体が赤く装飾され、 多くの言語で「第3インターナショナル」と描いた垂れ幕が飾られていた。そして翌3月4日のレーニンの演説の模様が記されている。この本は「レーニンとの最後の会話」で終わっており、半年後には本になった。

 ヒュー・ブロガン著『アーサー・ランサムの人生』(1984)に、1919年のランサムのことを書いている。それによると、
   『1919年のロシアでの6週間』は、6月12日に発行された。その作者によると、それは当時発表されたロシア革命に関する多くの作品の1つにすぎなかったにもかかわらず、莫大な売上を記録したという。その成功のいくつかは、他の作品が反ボルシェビキであったという事実によるものだったという。アーサーの本の主張では、ボルシェビキとの平和的な理解が可能であり、望ましいということであり、そのような政策はまだ内閣の想定外にあった。1919年に出版されたジョン・リード著『世界を揺るがした10日間』のような古典とではないが、「6週間」は、革命の後期の補足的な目撃証言として大変に価値があるとしている。